注:『千年の恋−ひかる源氏物語−』の感想文です。今の時点(平成十四年睦月)ではネタバレになります。尚、管理人は映画の出演者でかろうじてファンなのは渡辺謙だけです。女性陣(天海さん込み)に関しては、ほとんど興味もへったくれ(オイ)もありません。また、私のこの映画に対する評価は30点以下です。どんな感想を書くか、この点数から推し量って下さい。
それでも構わないという許容量の広い方のみ下にお進み下さい。






→主役注意書き

これは「吉永小百合=紫式部」が主役の映画です!!光源氏=天海さんではありませんのでご注意下さい。
(だったら、そうやって宣伝しろ!と私は言いたい。紫式部は「語り」程度の紹介しかしていなかったじゃないですか〜。)
見てみてびっくり。
映画前のCMからして吉永小百合三!昧!



↓以下、ストーリー混じりに突っ込みを。


→アクションな冒頭

紫式部が父の赴任に付いて越前(福井)へ行くのはいい。若いハズなのにもう吉永小百合なのも見逃しましょう。しかし、いきなり(多分大陸の)海賊が現れて、夫の藤原宣孝が殺されるのは本当のことなんですか!?しかも、海賊相手に大立ち回り(ちゃんばら)があったり。貴族(つっても下級〜中級ですが)の式部兄藤原惟規が、全然ひるまず刀をぶん回すのもありなんですか!?いくら治安が悪化しているとはいえ…。子供を庇って斬られた家来の人がカッコ良かったですが。
(ただ単に、東Aがアクションシーンを入れたかった!に、千点!)


→彰子かわええ

『源氏物語』が認められ、紫式部は彰子の女房(=教育役)になる。その時会った道長は亡き夫に瓜二つ。
(冒頭でいきなり宣孝役の渡辺謙が殺された時は、「えっ、これで出番終わり!勿体ない使い方をするな〜、東A。でも、渡辺謙て『道長』役だったハズじゃあ…」と考え込んでいた疑問が氷解しました。二人は従兄だから似てるって設定なんですね。だから式部が道長に惹かれるとゆー風に話が繋がるわけだ。納得。)
そして、ここから式部の帝のお相手育成ゲームvs清少納言が始まる。
(と思いきや。予想していたより清少納言の出番が少なかった。てゆうか、ほとんどライバル映像ないじゃねーかYO。前宣伝でライバルと言われていた森光子は、全部合わせても5分と出番がありませんでした。)
式部は彰子の教育のために『源氏物語』を語って聞かせる。その語りとともに、『ひかる源氏物語』の映像が綴られていく。↓
彰子役の水橋貴己は十二単と日本髪が似合っていて、すっごく可愛いです。天皇に気に入られるための勉強なんてしなくても全然おっけー。ビジュアルだけで余裕で定子に勝ってます!


→マザコンでロリコンで(レズな)ひかる源氏

光源氏がマザコンでロリコンで人さらいでスケベで野心家で風流だけは解する人でなし、なのは知ってましたが、今回はその上更に…。

レズくさい。

いや、確かに天海さんはすっごく綺麗なんですが、どうにも頻繁にある閨のシーンがレズくさく見えて仕方ない…。(女だと知ってて見ているからでしょうか?その他の舞とか立ち居振る舞いでは、彼女は完璧にお美しい光源氏「様」でした。)


→女性陣と光源氏

それぞれ、彼と関係した女性の写し方を簡単に上げていくと。
六条御息所と朧月夜はポル○ちっく。
初めの紫の上はまじロリコン。(子役をムくなと言いたい。)
末摘花は何故か自分から末摘花と名乗る。
空蝉は逃げるシーンだけ。
夕顔多分省略。(確認出来ませんでした。)
花散里と軒端の荻は、いたようないないような。
秋好中宮は誰の娘であるかの説明もなく、源氏の作った秋の館にいきなり登場。
夕顔の娘玉かずら(字が出ない…)もいつの間にか館にいて紫の上に嫉妬されている。
はっきり言って、マトモに説明があり、どんな人なのか描かれたのは藤壷さんだけでした。
これは見る人全員が『源氏物語』を知っているとゆー前提で作ってますね、東A!
秋好中宮なんてパンフレットを見てから、やっとどういう人物であるかを思い出しました。
(ちなみに私は『あさきゆめ○し』で得た知識頼みな人間です。)
光源氏の理想=紫の上は、愛されても不幸な女性として描かれてました。でも、その「愛」が全然見えない…。
大半の女遍歴の描かれ方が、閨のシーンばかりで…。あの〜、「歌」とかでちゃんと恋の駆け引きはしないんですか?天海の色香で押し倒すだけなんですか?な状態でした。

平安貴族をナメてます。


→凄過ぎる演出

一番物凄い演出だったのは、明石の君との出会い…。(あの映像が流れている最中、いやに映画館が静かだった。)

泳ぎなんか全然出来そうにない、都の貴族の坊ちゃんが、明石の君と明かしの海にみたてた鳥羽水族館の水槽の中ですっげぇアクロバットな追いかけっこ遊泳を展開。


(魚たちにイイ迷惑です。あまりの演出に、瞬間、自分があんぐりと口を開けていた事を認めます。)


あと、誰もが「うっ、これはっ…」と思うであろう最後の部分…。


杖をつきながらよたよたと歩く老け切った頭の中将が、蜘蛛の巣が張った源氏の館を訪れる。それを出迎える惟光も当然顔に皺が寄っていて、こともあろうに、光源氏が自ら庭でたき火をして昔の恋文を焼いている。そうして頭の中将が蹴った蹴鞠が足に当たり、振り返った光源氏の顔も皺くちゃ…。


(天海さんに特殊メイクをさせています。)


やってくれました、東A。いや、演出家さんですか?


あはははははははと笑いましたよ、心の中で。


既に死に体だった映画を見続ける気力にトドメどころか、わざわざ介錯までありがとうございます。


かつて栄華を誇った人の虚しさとかやりたいのは、分かりますが。
よりにもよって皺くちゃよろよろとは…。
是非とも、天海ファンに感想を聞きたいところです。


→吉永小百合は映画に恵まれないって本当ですか?

『源氏物語』が功を奏し、無事に彰子が帝の子を懐妊する。それを区切りとして、式部は彰子の元を去ろうとする。彼女の文字使いの才に惚れた道長は彼女を引き止めようとするが、彼女は受け入れない。
越前に帰った式部を娘賢子と家族が迎える。
式部は大きくなった娘に「賢子…、あなたの時代には、あなたが殿方を選んで下さい。たとえ、どんな殿方であっても…」と言う。
昔(=平安時代)の貴族の女性は綺麗な着物で着飾っていても、その実は男の都合で振り回される不幸な境遇だった、とゆーことをこの映画は表現したい。(と脚本家が言っている)

…んな誰もが知ってるような事を、今更取り上げる必要全然nothing。

こんな古臭いネタを映画の主題に持って来られるとは、思ってもみませんでした。
(一夫多妻なのは、余裕のあるごく一握りの人達だけだっちゅーに。あの当時でもほとんど大半の庶民はできちゃった婚の一夫一婦制が基本です。)
最後にお貴族な式部と家族たちが、砂浜で網を引く漁師達の手伝いをするシーンでこの映画は幕を閉じます。
忠敬でもこのパターンを使ってました。
東Aはどうしても主人公を庶民の味方にしたいらしいです。


だったら、明治以前の歴史物に手を出さないで下さい。



演出は笑えて面白いです。映像も綺麗です。ひかる源氏も女性陣も美しいです。彰子役は可憐です。(しかし、他の子役は後にいくにつれてどんどんレベルが下がって行く…。)宮中の儀式の場面はなかなか壮観です。
でも、作品としては…。
絶対失敗すると確信していた松○聖子の歌は、全く予想を裏切ってはくれませんでした。平安時代の映像を掻き乱す上に、話の展開にちっとも合ってないし、絵師は絶対に描かないハズの肖像画を描いたりしてるし、紫式部は自分から紫式部って名乗るし…。ちゃんと平安時代を描く気ありますか〜?って聞きたくなるような部分がもりだくさんあり。
という映画の感想を叔母に言ったら、こういう台詞が返ってきました。


「あの人(吉永小百合)も作品に恵まれないね」


そうなんですか?



追記:この年の日本アカデミー賞の発表を見た時、上記の台詞に納得してしまいました。
だって、映画に出ていた吉永小百合が「司会」をやっているじゃあないですか。出演者が司会をやる=絶対賞がもらえないということです。
案の定、『ひかる源氏物語』は天海さんと映像でしか賞を貰いませんでした。
東Aの何周年記念の作品だったんですよね、あれ。
お金も、すんごいかかったんですよね…。




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