数年分のストックを利用して、
主に図書館で借りた本の感想を簡潔に書いています。
本当に簡単に書いていますので、
ネタバレなどの心配はほとんどありません。
解説風で内容を賞賛する事が滅多にないのが特徴です。

『探偵ガリレオ』
『光の帝国』
『六番目の小夜子』
『球形の季節』
『フリモント嬢と奇妙な依頼人』
『不安な童話』
『3000年の密室』
『蚤のサーカス』
『風よ、万里を駆けよ』


『探偵ガリレオ』東野圭吾

大学の助教授が探偵だというどこかで聞いたような設定の推理もの。短編の形をとり、事件は四つだったと思う。友人の刑事が持ってくる行き詰まった事件を、インスタントコーヒーしか飲まない物理学の助教授が苦もなく解決していく。毎度、実権をする所が多少変わっているが、助教授の性格が研究第1な性分で、どうしても他作品の助教授を思い出させる。
○○○○でできるデスマスクが1番ありそうだと思った。

『光の帝国』恩田陸

本の紹介雑誌を立ち読みした時に見つけ、借りた。
一気に読んだ。特に派手な話ではない。超能力モノであるが、超能力モノらしくない。これからシリーズものとして続くそうなので、次も読んでみようと思う。珍しく戦時中の話が印象に残った。

『六番目の小夜子』恩田陸

『光の帝国』が面白かったので、借りた。日本ファンタジーノベルの最終選考に残った作品であるとの事。一気に読んだ。ただ、最後の解説でホラ−作品と言っていたが、どこがホラーだったのかよく分からない。『小夜子』のような伝統のあり得る、「学校」という空間、時間。あの湿った、長く止まる熱を帯びて、屈折せざるを得ない第二次成長期には、相応しい「怪談」である。

『球形の季節』恩田陸

『六番目の小夜子』とかなり共通点がある。高校生を主役としているせいか、男の子の性格付けに幅が少ないように感じられる。主人公の考え方や感じ方はよく理解出来た。地方都市を舞台とした話の内容は面白かったが、あとに感動はなく、感覚を残す作品である。

『フリモント嬢と奇妙な依頼人』ダイアン・デイ

『流行通信』を立ち読みしていて紹介文を見つけ、そのまま買った本。
舞台は1920年代のアメリカサンフランシスコ。タイピストを職業とするC・フリモント・ジョーンズ嬢が主人公である。好奇心旺盛な素人探偵。犯人には意外性がない。ただ、頑張って一人立ちしようとしている彼女の姿勢は、若い女性の共感を得るだろう。表紙に魅力がなければ、買わなかった。

『3000年の密室』柄刀一

3000年と聞いて、てっきりエジプトあたりのが舞台だと思っていた。その方が派手で、殺人事件に相応しいと勝手に想像していたからだ。
個人的にはこの縄文人殺人事件の方が、ネタとして楽しい。脇役の正史偏重主義の頑迷な歴史学者は、自分がいた大学にもいた。考古学の最新情報も嬉しい。惜しむらくは表紙と犯人に到るまでの推理展開。考古学と古代史の情報提供に紙面を割き過ぎている。主人公の女性が縄文人を殺した犯人を突き止めるまでの過程が少々唐突であるし、そこにスリルがほとんどない。歴史好きは楽しめるが、そうでない人は無駄に長く感じられるのではなかろうか。救いは読み易さである。

『蚤のサーカス』藤田雅矢

ノミ。
作中にあったが、蚤市の蚤は本当にこの蚤なのか?確か、違ったよなぁ。それは兎も角として作品は面白かった。昆虫が好きではない人にはそれこそ虫酸が走る内容であるが、時代背景と内容がぴったりと合致した安定感・安心感がある。不可思議なようでいて、自然な話だ。完成度は高い。

『風よ、万里を駆けよ』田中芳樹

花木蓮の物語と言う事で借りたが、内容は隋王朝滅亡史であった。木蓮の話は全体の10分の1程度。作者の中国好きがよく分かる。しかし、中国史の国家興亡繰り返しは飽きる。英雄が多過ぎるのため、名前だけで疲れてしまう。