数年分のストックを利用して、
主に図書館で借りた本の感想を簡潔に書いています。
本当に簡単に書いていますので、
ネタバレなどの心配はほとんどありません。
解説風で内容を賞賛する事が滅多にないのが特徴です。

『塗仏の宴』支度、始末
『ガリバー・パニック』
『「装」日本人の歴史』
『三月は深き紅の淵を』
『王室マップ』
『白鳥異伝』
『書く前に読もう超明解文学史』
『はみ出し銀行マンのビッグバン日記』
『クロスファイア』上下


『塗仏の宴』京極夏彦

支度が出来てから始末されるまでの月日が長くて、始末までに「支度」の大半を忘れていた。始末を読み進めるにつれて大体思い出したが、話が長過ぎたせいか、今回は途中で終わりが見えた。『女郎蜘蛛の理』『姑獲鳥の夏』で放り出された人達の始末ついでにこれから何度も絡みそうな悪役登場。揚子江(長江)文明と塗仏の関わりは楽しい論であったが、話そのものには特に惹かれない。
いっそ、京極堂+多々良+光保の妖怪三者による会話形式の妖怪語りにしてくれたら幾らでも大枚をはたくんだがなぁ。その方が作者も楽しかろうに。

『ガリバー・パニック』楡周平

身長が100メートルの人間がもし出現しても、地球上の重力に足の骨等が耐え切れない、という科学的前提を無視した現代風お伽話。経済界の張り切り具合や政治家の腹黒さが失笑を誘うが、特に冒険とか胸踊る活劇のある内容ではなかったのが、惜しい。表紙の絵の割には軽く読める本。

『「装」日本人の歴史』樋口清之

軽く読める「○(漢字一文字)」シリーズものの一つ。
故に、内容が頭に残らない。日本人は背中にも気を配るとか、なんとか色々読んだ気はするのだが…、何が書いてあったかと聞かれると答えられない。「装」の割には、写真の使い方がイマイチである。

『三月は深き紅の淵を』恩田陸

そそるタイトルだと思ったら、「それ」が主役だった。
テーマは小説を書くと言う事。

『王室マップ』時事通信社

問題のない国・王室なぞ存在しない。というのがよく分かる本。民主主義の台頭は王政を否定し、王を大概「悪」としたが、民主主義そのものも正義ではないと広く知られた今日にあって、改めて注目されるのが、30余りの「王」達。日本の天皇を含め、これから「王」達は消えていくのか、存続するのか。興味深い問題である。
王様がいる国の人々は、対外的にそれを誇りにしている節がある。何故だろう?

『白鳥異伝』荻原規子

勾玉シリーズもの。以前から1度読もうと思っていたのだが、これを読んだら他の二冊を読む気力を失ってしまった。表紙も良くないし、最後があまり頂けなかった。もっと、あっさりばっさり何かを切り捨てる事も必要なのではないだろうか?主役達がいい子過ぎる。

『書く前に読もう超明解文学史』三田誠広

W大学の創作教室において講議をしている小説家の本。
そもそも三田誠広という作家を知らなかった。『いちご同盟』という本のタイトルは聞いた事があるが、見た事はない。小説家ってこんなに自負心があるものか、という点に先ず感心した。確かに書物が歴史を動かすことはあり、その影響力もバカにならない。だが、そのような作品は人を引き付け、既成社会に衝撃を与えるものでなくてはならない。そして、広く読まれなければ、意味がない。
興味が持てそうな作品が幾つか紹介されているのが、良かった。

『はみ出し銀行マンのビッグバン日記』横田濱夫

ビッグバンで日本の銀行の半分が潰れる事が良く分かる本。1998年に読んだのだが、相次ぐ合併を半分消失とすれば言う通りになっている。

『クロスファイア』上下 宮部みゆき

腐った若者達に正義を執行する超能力者の戦いと終り。
日本の小説における超能力者の扱われ方は、いつも同じ。能力を隠し、孤独に暮らし、最後は悲劇で幕。このパターンに嵌っている点を除けば、話は面白い。