『金なし知名度なしで選挙に出る法』石原里紗
長島一由。
確かこの間('99年に読んでます)最年少で逗子市市長になった人の名前だと思う。長島さんについてはこの本で初めて知ったが、長島さんの応援をしていたフィンランド出身の弦念丸呈さんの名前は「青い目の日本人」という紹介で聞いた事がある。
現在の政治に失望して政治そのものに無関心である人は多いが、失望しているからこそ変える必要があるのではないか。変えたいと思っている人は世の中に、案外少なくない。選挙には敗れたが、この人の選挙活動そのものが人々の内面を代弁していると思う。
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『QED』百人一首の呪 高田崇史
殺人事件には何の必然性もない。
百人一首の謎解きだけで充分に面白い読み物になるのに、あえて探偵もやらせるのは昨今の流行のせいであろう。百人一首の読み手に不幸な人が多いのは知っていたが、下手な歌が多いとは気が付かなかった。そう言われてみれば簡単な歌が多い。
日本にはこういう変なものが何故か後々まで残る傾向がある。昔話でも、遊び歌でも。誰もが知っているものに限って、正体が不明であったりする。
この本では保身のために百人一首が編まれたという結論に達しているが、それが何故、阿仏尼に「和歌の浦に…」と歌わしめる理由になるのか、そこが分からない。
不明のまま放っておかれると気になる…。
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『象は忘れない』アガサ・クリスティー
印象的なタイトルであると思ったら、諺であった。
過去。
誰もが忘れる、遠い昔となってしまった過去。
だが、象は覚えている。
例え、それがたった一本の針であろうとも。
彼らは様々な事を知っている。
臆測や思い込み、忘却、噂。真実は細かく細分され、影も形も消え失せてしまった。かのように見せ掛けて、案外、誰もが知っている。ただ、知ろうとしないだけ。ポアロはラキシスの如く、糸を寄せ集め再び束ねる。
そう、象は忘れないのだ。
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『謎のギャラリー』特別室 北村薫編
最初の話がえらく壷に嵌って笑えた。
都井邦彦「遊びの時間は終わらない」。
その他はまぁ、好みではないが面白い短編が集められていた。
いやあ、警察役人を虚仮にする話って楽しいなぁ。
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『アムステルダム』イアン・マキューアン
面白くなかったが、この本を良いとする書評は多い。賞も取っている。1/3で挫折した奴に云々言う資格はないかもしれないが、何でこんな後ろ向きな作品を「男」はいいと言うのだろうか。
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『ロスノフスキ家の娘』ジェフリー・アーチャー
原題『The Prodigal Daughter』(放蕩娘)
合衆国で生まれている事。
35歳以上である事。
合衆国に30年以上住んでいる事。
以上がアメリカ大統領に必要な最低限の条件である。
話のノリは名作劇場ジュニア版。政治の舞台描写はリアルだが、道徳に反しない展開で描かれ、初の女性大統領誕生に向けて話は突き進む。
物語後半途中で彼女がどういう方法で大統領になるかは読めた。姑息な気がするが、まぁ、無難とも言える。
一貫したテーマのせいか長い話にも関わらず飽きる事はない。
これを読んで政治家には「勉強」がいつまで経っても必要である事がよく分かった。
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『プロヴァンスの秘密』愛と復讐のシャトー・デ・ゾリヴィエ事件 フレデリック・エブラール
『LE CHATEAU DES OLIVIERS』
おお、緑豊かなる彼の地よ。葡萄酒の香り高き祝福の地よ。汝、自らの価値を忘るる事なかれ。
中年のあばんちゅーる。いや、プロヴァンスを舞台とした愛と復讐の一幕。
フランスで視聴率37%を記録した作品を小説化したものだ。
フランスにおいてプロヴァンスブームを巻き起こしたと言うが、実際にプロヴァンスのある南フランスは人種、民族、文化、宗教、生活全ての面でなかなかに魅力的である。女性作者らしいロマンスの進展振りはいささか閉口させられるが、だるい前半はかえって後半の怒濤の盛り上がりへのプラスとなっている。男の人には耐えられないメロドラマ振りが日本でヒットしなかった原因であろう。
思いっきり女性向きな作品である。
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『大統領に知らせますか?』ジェフリー・アーチャー
(読んだ時点で)タイムリーだった作品.
哀れ、ケネディ・ジュニアの灰は海へ…。
1981年という近未来を想定したサスペンス。JFKの弟エドワード・ケネディの命は果たした守られるのか!?
間抜けなFBIが主役でなければ、ここまで話がこじれる事はなかったであろう。事件の首謀者は銃を構える前に捕まっていたに違いない。政治の話がやたらとリアルだと思ったら、作者が元英国下院議員であった。(←テレビにも度々登場している。先年は選挙に関する偽証罪で訴えられていた…)
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『ネヴァーランドの女王』ケイト・サマースケイル
『The Qeen of WHALE CAY』
実在する男装の麗人って美形がいないよなぁ。(溜息)
メアリアン・バーバラ・カーステアーズ=ジョ−・カーステアーズ。ピーターパンになりたかった少女。
実在の人物。
彼女はピーターパンになりたくて自分の王国を作り、立て籠る。しかし、本物のピーターパンでない限り、そこに居続ける事は出来ない。
これを読むと母親の不在が子に与える影響の強さや、真の金持ち、白人達が未だに引き摺っているものがどんなものであるかがよく分かる。
ジョー・カーステアーズはその全てを体現している。
全編を通して、彼女はあまりにも弱い人間である。
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『スヌーピーたちのアメリカ』廣淵升彦
チャールズ・シュルツ氏、大腸癌にて2002年2月永眠。翌日、最後の作品が新聞紙面に掲載された。30年近く1度も休む事なく新聞に「スヌーピー」を描き続けた業績はそれだけで賞賛に値する。
銃やドラッグ、映画、差別、戦争、テロ。ではないアメリカを知るには『スヌ−ピ−』を読めば良い。ドラマチックではないが、それは確かにアメリカを象徴するものなのだ。大統領も読んでいるし、小学生だって楽しんでいる。それが「スヌーピー」。それがアメリカ。それが普通の平凡なアメリカなのだ。と主張する本。
ちなみに普通の日本を理解するにはアニメの「サザ○さん」が最適だとか。
そう言われればそうかもしれない。
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