一.他人の妻を密懐する罪科の事。

右強姦和姦を論ぜず人の妻を懐抱するともから所領半分をめされ出仕をやめらるべし。所帯なくは遠流に處すべきなり。女の所領おなじくこれをめさるべし。所領なくは又これを配流せらるべき也。次に…(以下略)。

気になったので、調べてみました。鎌倉幕府の法律(と言ってもほとんど所領(=領地)問題についての決め事ばかり。)「御成敗式目」に定められた、不倫発覚時(強姦も含んでしまいます…)の処罰であります。
簡単に内容を説明すると、こーゆーことです。

無理矢理だろーが、合意の上だろーが、他人の妻と通じた男は領地半分取り上げ!幕府で働くのもダメ!もし、所領がない場合はどっか遠くへ(日蓮が行った佐渡とかに)追放!
同じく。女も領地は没収!なければ、どこかへ追放だ!(男と違って「遠く」でない所に少〜し情けがあるような、ないような。)

即ち、あのまま「密通」を梨子さんが主張していれば、頼綱は領地を半分取り上げられた上に、侍所所司の仕事をクビになっていました。(得宗家御内人としての地位は…。やっぱ失うのかな?そしたら、執権殿ともさようなら〜。)梨子さんも領地があれば(極楽寺流の領地がある筈ですし、安達の領地も彼女は持つ権利があります。)、それを没収されていたのです。

つまり、密通発覚=夫による成敗にはならないのです。
不倫で成敗してもいいよ〜となるのは、もっと後の時代(江戸時代くらいかな?)になってからです。しかもそれが通用するのは全人口の5%しかいなかった武士の世界だけで、大半の一般庶民の間では不倫、即、斬などというのは先ず、ありません。実際の所、日本は明治になるまで、男女の付き合いはかなりおおらかなお国だったのです。(江戸時代においても、結婚前に男性経験のない女性=よっぽどもてない女(地域、身分によって差があり)というのが常識だったそうな。)

成敗(死)ネタがなければ、ドラマ的には盛り上がりに欠けてしまいますが…。
梨子さんがあそこで密通しましたと言っても、状況は頼綱と梨子さんだけに不利だった訳で、泰盛は妻に浮気された夫としてちょっくら笑いものになる程度。(男としてのダメージは大きいか…。)妻も失うが、一緒に政敵も葬れてプラスマイナスゼロという結果にしかなりません。
でも、それではドラマにならないのでまたもやこの「御成敗式目」の条文は無視されたモヨウです。
それに長時、義政、義宗がいなくなったと言っても(いくら庶民のような格好をしていようとも)、梨子さんは北条一族の中でも執権を出すくらいの家柄(極楽寺流)の女性です。浮気したからと、泰盛が(夫が)簡単に斬れるような相手ではありません。寧ろ、発覚しても見てみぬ振り(マロ将軍のように)が常識のような気がします。
そのあたりを踏まえた上でのドラマ作りって不可能なのでしょうか?

今年のえぬえちけい大河ドラマに対する、根本的な疑問です。
…私は「歴史」ドラマが、見たい。(切実)
来年も無理そうだしな…。


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