◆第三十七話「平家最後の秘密」◆



安徳天皇生き延び作戦は宮尾さんの原作に寄るものらしいが、「だから、何なんだ」としか思えん。安徳天皇が生き延びようが死のうが、源氏にとっては痛くも痒くもない。源氏は「平家」が倒せればそれで良く。「天皇」を殺すような大それたことは絶対にせんのだからな。天皇家+平家の血筋が残ることで「誰か」「どこか」に意趣返ししようと謀るなら、その対象はどう考えたって、「天皇家」の方だろう。



<大筋>
平家を見事倒し、都へ戻った義経は早速後白河法皇に宝剣を覗く、三種の神器を返した。だが、切り札を容易く今後の敵に返したことで、義経は再び頼朝の勘気を蒙る。未だ無断任官の許しも得ていないのに、また。
頼朝はバカ義経に従わぬよう御家人に触れを出し、義経は鎌倉勢力の中で孤立する。兄の真意が分からぬ義経は苦悶する。その一方で、前回よりの懸念を正すために、義経は出家した建礼門院の元を訪ねる。そこに親王として生き延びた天皇の姿を見て、義経は平家の秘密を確信するが、秘密をそのままに寺を去った。



→頼朝×義経
頼朝が義経の名を懲罰の対象者から外していた、理由は「察しなさい」か、「恩情」か。普通の鎌倉御家人なら、無断任官に対する頼朝の怒りが分かって当たり前。が義経には分からなかった。そして、これが決定的な兄弟の断絶となる。
つまり、義経は「鎌倉御家人」ではなかったのだ。そもそも彼は東国武士ではない。鞍馬で育った「都人」であった。「都人」故に皇室の権威に弱く、東国を都から分離させようとする頼朝の野心、東国武士の願いを理解できない。義経には初めから、「都」での栄達しか見えてなかったのではないだろうか。即ち、平家と同じ、貴族の一員に同化する道。それは頼朝が妥当しようとしている「存在」になることである。となると、これからの2人の「対立」は自然なことであり、義経が鎌倉御家人に総スカンを喰らうのも当然。彼は、つまり第2の「平家」であったのだ。
などという、考えが生じた。合っているんじゃないかと思う。



→義経正妻「萌」
良い正妻振りを発揮してます。ええと、確か最初の設定では頼朝の命令で義経を探る役割があったのに、義経の優しさにほだされて…。となっていた筈。そんなシーンが欠片もないんですが、余計なことをやり過ぎて、えぬえちけいに時間がなくなってしまいましたか?



→建礼門院
平家の滅亡後、輝く人。
だといつも思うのだが、本当にそうと思わせる今回であった。生き延びたからこそ、彼女は語り継がれる女性となったのだ。



→うつぼ
あっさり嫁に行ったと報告されただけで出て来ない、とは…。あれだけ散々つきまとって、奥州にまで追い掛けて来たのに。
うえどさんのスケジュールが合わなかったんだなあとヌルく思いました。



→次回「遠き鎌倉」
腰越状ですな。
これが残ってなかったら、あらゆる義経伝説は生まれなかったであろうもの。裏を返せば、これしか義経の悲劇性を高めるものはない。(出来過ぎてるので、「偽物」の疑いが晴れないものでもある)